認知症とは、脳の病気、その他の原因により、脳の認知機能が低下して、日常生活、コミュニケーションに支障が出てくる状態です
最初のうちは、単なる物忘れのように見えていますが、徐々に、普段の仕事、生活でミスが増えたり、お金の計算ができなくなったり、道に迷ってしまったり、ものが盗まれたと思う妄想にとらわれたりしてきます
高齢者の増加とともに認知症の患者さんが増えています
急速に増加する認知症に対して、専門医の育成や、地域の医療・支援体制の整備は十分とはいえません
本人、ご家族、医療従事者、が十分な知識を得て、社会的支援体制を整備していくことが課題です
目次
認知症を取り巻く状況
日本での認知症者数は、2012年時点で462万人と推計されています
今後、2060年には850万人に達すると予測されています
65歳以上高齢者における有病率は4〜8%と報告されています
今後もすすむ高齢化社会において、国家として、対策をたてていくことが必要と考えられています
認知症のサイン
などがサインです
家族にこのような症状が出たりしたらすぐに物忘れ外来を受診するようにしましょう
認知症の治療法
アルツハイマー型認知症などの脳変性疾患の治療法は残念ながらまだ確立されているとはいえない状況です
現実的なところは、薬などを使用しながら、なるべく進行を遅らせることが目標となります
BPSDなどの精神症状については、環境調整などを行ったりしますが、自宅ではなかなか難しいことも多く、デイサービスなどの利用も行いながらやっていきます
治療できる認知症
認知症は、なかなか治らないものではありますが、認知症のなかでも、治る認知症があります
いくつか原因がありますので、まずは、病院受診した時に、治すことのできる原因が隠れていないか、を探すことが、医師の重要な役割となります
正常圧水頭症
なんらかの理由で、脳の中の水が溜まっている部屋(脳室)が大きくなってしまい、内側から脳を圧迫するために認知症が起こってきます
正常圧水頭症の3つの有名な症状として
- 物忘れ
- 歩行障害
- 失禁
があります
このような症状が出たりしたら、物忘れ外来を受診してください
正常圧水頭症は、シャント手術により、溜まった髄液をお腹の中などに流してあげることにより、劇的によくなります
慢性硬膜下血腫
70〜90代の高齢者に多いです
転倒したりなどの頭部打撲などから、2週間から1ヶ月経過したのちに、硬膜下にじわじわと血がたまってきます
歩行がしにくくなったり、左右どちらかの手足が動かしにくくなったり、認知症が急にすすんだり、などの症状がでます
治療は、頭にドリルで小さい穴をあけて、血を抜くことです
劇的に症状が改善することが多く、患者さんの状態にもよりますが、ほとんど元の状態に戻ることが多いです
アルツハイマー型認知症などは、今現在もなかなか治ることは難しい病気ですが、もしも治る認知症であれば、きちんと治療をすることによって治りますので、そうした時には、必ず受診して、病気を見つけてあげることがとても大切です
疾患特異的な蛋白マーカーによる変性型認知症の分類
変性型認知症では、病理検査で疾患に特徴的な蛋白マーカーがあり、それによる分類は、病態理解のために有用である
病名 | 関連蛋白 | 局在 | 症状 | FTLD分類 |
アルツハイマー病 | アミロイドβ 3,4リピートタウ | 神経細胞 | 経験記憶の障害 | - |
PART(SD-NFT) | 3,4リピートタウ | 神経細胞 | 高齢発症タウオパチー | - |
ピック病 | 3リピートタウ | 神経細胞 | FTLD | FTLD-tau |
嗜銀顆粒性認知症(AGD) | 4リピートタウ | 樹状突起 | 高齢発症タウオパチー | FTLD-tau |
進行性核上性麻痺(PSP) | 4リピートタウ | アストロサイト 神経細胞 | パーキンソン病+認知症 | FTLD-tau |
皮質基底核変性性症(CBD) | 4リピートタウ | アストロサイト 神経細胞 | パーキンソン病+認知症 | FTLD-tau |
レビー小体型認知症(LBD) | α-シヌクレイン | 神経細胞 | パーキンソン病+認知症 | - |
FTLD-nonMND | TDP-43 | 神経細胞 | FTLD(FTD,PNFA,SD) | FTLD-TDP (A〜D, 4 types) |
FTLD-MND(ALS) | TDP-43 | 神経細胞 | ALS+FTLD | FTLD-TDP (A〜D, 4 types) |
aFTLD-U,BIBD,NIFID | FUS | 神経細胞 | bvFTD, ALS+FTLD | FTLD-FUS |
タウ蛋白について
Tau入門 (新潟大学脳研究所)
- Tau蛋白は、細胞骨格を形成する重要な蛋白です
- Tauopathyとは、この蛋白が異常に沈着する疾患の総称です
アミロイドβについて
APPから、βセクレターゼおよびγセクレターゼ酵素複合体で切断され、アミロイドβペプチドが産生されます
参考 AbCamページ
病理画像について
日本病理学会の病理コア画像がわかりやすいです
東京都医学研・脳神経病理データベースもわかりやすいです
記憶について
記憶の経路として、Papetsの回路 と Yakovlevの回路が知られています
こちらが詳しくわかりやすいです