アルツハイマー型認知症 脳の病気 認知症

アルツハイマー型認知症

2024年2月27日

アルツハイマー型認知症

アルツハイマー型認知症 Alzheimer's disease (AD)は、認知症全体の2/3を占めています

ADの治療で重要なことは、早期段階(軽度認知障害 mild cognitive impairment MCI)のうちに診断し、認知症予防の方針をしっかりとうちたてていくことです

ADには、中核症状と、BPSDと総称される症状があります

中核症状とは 記憶障害(記銘力障害)、見当識障害(日付、場所、人)、遂行機能(計画、段取り) など

BPSDとして、徘徊、妄想、せん妄、不安感、うつ状態、不眠 など

病理

  1. 大脳萎縮 脳回の萎縮、脳溝の拡大として観察される 脳萎縮は短期記憶や見当識を司る海馬傍回から始まり、徐々に範囲が拡大していく
  2. 老人斑  Aβが神経細胞外に凝集して形成される構造物である。
  3. 神経原線維変化 (NFT) 微小管結合蛋白質であるタウ蛋白質が過剰にリン酸化され、神経細胞内に蓄積、線維状構造を呈したものである

病態生理

コリン仮説

1981年に、Whitehouseらが、AD脳のマイネルト基底核のACh作動性神経が障害され、ACh系の活性が低下している」と報告した。

Bartusらが「コリン作動性神経の変性・脱落」が認知機能低下と関連するというコリン仮説を提唱した

この仮説をもとに現在、抗認知症薬として使用されているコリンエステラーぜ阻害薬が開発された

グルタミン酸仮説

グルタミン酸は脳内における主な興奮性神経伝達物質である

NMDA受容体と結合して、記憶や学習の形成に関係する

AD脳ではシナプス間隙のグルタミン酸濃度が持続的に上昇し、その結果として、NMDA受容体が過剰に刺激されたり、AβがNMDA受容体に結合して、神経細胞内にCa2+が過剰流入する。これにより神経伝達シグナルがノイズに埋もれてしまい、記憶障害がでるといわれる

これをもとに抗認知症薬 NMDA受容体拮抗薬が開発された

アミロイドカスケード仮説

1985年に老人斑の構成成分がAβであること、1986年にNFTがタウ蛋白の過剰リン酸化により生じることが明らかになり、老人斑とNFTの相互関係が焦点となった。

1992年、Hardyらがアミロイドカスケード仮説を提唱した

これは、AβがAD発症メカニズムの最上流に位置し、神経細胞膜表面に存在するAPPがβセクレターゼ、続いてγセクレターゼにより切断されてAβが賛成され、細胞外に蓄積することでシナプス障害や異常リン酸化タウによる神経細胞毒性が誘発され、神経細胞死を引き起こしてNFTを来たしAD病態が進行するという仮説である

①ADの病理所見のうち、現在判明している範囲で最も早期に出現するのがAβ蓄積であること

②現在判明しているFADの原因遺伝子の多くがAβ産生、もしくは凝集能を亢進させるものであること

③APP遺伝子が局在する21番染色体のトリソミーであるダウン症候群で、APP発現が1.5倍であることからAβの産生が亢進して早期からAD様病理を呈すると推察されること

などからアミロイドカスケード説は一定の支持を得ている

この仮説に基づき、抗Aβワクチン療法が考案された。しかし、ヒトに対する治験でAβとアジュバントの混合物を接種すると、Phase IIで298例中18例に急性髄膜脳炎を認め、死亡例も報告され、治験は中止となった

この治験の長期経過で、老人斑は消失、減少したものがあったが、全ての症例で臨床症状は進行し、老人斑を除去しても認知症の進行をとめることができないことが確認された

オリゴマー仮説

不溶性Aβ線維(フィブリル)の凝集により細胞外に老人斑が形成される

しかし、神経細胞死や認知機能低下の程度と相関しない点が、アミロイドカスケード仮説のみでは説明困難であった

1998年、LambertらはADにおける新規Aβ分子種として分子量17kDaおよび27kDaとして観察されるAβ由来拡散性リガンドAβ-derived diffusible ligands(ADDLs)を報告した

2003年にはWalshらが分子量8kDaのAβ二量体を発見し、シナプス機能障害を呈することを報告した

その他にも、オリゴマー単独でAD症状、末期病理像まで呈することが報告されている

タウ仮説

これはADの主要原因物質がタウ蛋白質であるとする考え方である

アミロイドカスケード仮説の欠点として、Aβ沈着(=老人斑)の程度が認知機能低下の程度と相関せず、逆にNFTの方が神経細胞死や認知機能障害と相関すること、抗Aβ治験がことごとく失敗していることなどがある

アポリポ蛋白質Eの関与

APOEが脳におけるAβクリアランスに関与していると考えられる

APOEにはε2,ε3,ε4の3つのアレルが存在する

APOE4は、APOE3と比べてそのクリアランス作用が弱いためAPOEε4がAD病態を促進すると考えられる

その他

ADにおいて、酸化ストレスが病態進行に寄与することが示唆されている

AD脳においてはAβ沈着部に活性型ミクログリアが集積しAβを貪食し、さらに炎症性サイトカインを放出して神経炎症を呈し、神経障害性に作用しAD病態を増悪させるとされる

糖尿病や高血圧、肥満などの生活習慣病もADリスク因子として知られる

糖尿病においてはインスリン抵抗性によりAβクリアランスが低下する可能性が示唆されている

アルツハイマー型認知症の診断についてはこちら

専門医のための認知症テキスト

アルツハイマー型認知症の遺伝

アルツハイマー病の原因遺伝子として知られているのが、APP, PSEN1, PSEN2という3つの遺伝子です

これらの遺伝子に変異があると、高い確率でアルツハイマー病を発症し、早期発症型家族性アルツハイマー病と呼ばれています

これらから、アルツハイマー型認知症のメカニズムについての研究が行われてきました

その他に、リスク遺伝子があります

最近の研究で、アポリポプロテインE遺伝子(APOE)で、これにはいくつかの型があり、最も多いタイプはε3型で、その他にε4型や2型があります

ε4型を持っていると、アルツハイマー病になるリスクが高くなります

アルツハイマー病は遺伝する? (国立長寿医療研究センター)

軽度認知障害(MCI)について

認知症に進行する前駆状態です

MCIといいます

-アルツハイマー型認知症, 脳の病気, 認知症

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